20160916

neco論で経済 第10回

 

  フィンテック

 

日本のフィンテック投資は大きく立ち遅れている。

コンサル会社アクセンチュアが世界のフィンテックベンチャーなどへの投資額を集計したところ、15年の世界の投資額は過去最高の222億6500万ドルで、14年の約2倍に拡大した。

国別では米国が全体の約6割を占めた。2位はタックスヘイブン(租税回避地)の英領バミューダ諸島の20億ドルで、以下、中国の19億7千万ドル、インドの16億5千万ドルと続き、日本はわずか6500万㌦。

ビットコインは通貨の発行上限を2100万BTCに抑えている。

09年にサトシ・ナカモトが考案。金兌換(だかん)券に似せて、発行限度額を設定。世界の利用者は1400万人とされる。

ビットコインは、銀行口座の「預金」と違い、その価値を認めあう所有者同士のみの決済手段として有効。値上がりを狙う投機家も。

 

ブロックチェーンは金融機関の生命線である「信頼できる台帳」の実現を可能にする技術。その要件は。

①取引データの適正、整合性の確保(資金の出入り、付け替え、残高管理)

②不正取引、改ざんの防止(セキュリティ)

③いついかなる時でも円滑に利用できる(利便性、安定性)

 

金融機関はこれまで、この要件を持続的に保証するため、勘定系のシステムに莫大なコストを費やしてきた。ブロックチェーンは極めてシンプルな手法で、「信頼できる台帳」の維持管理コストを劇的に削減する。「host(server)-client」型の大規模な金融ネットワークの支配構造を根底から変えてしまう可能性を持っている。

 

■大企業、公的機関などなどが抱える大規模システムを無用の長物にする可能性は大きい。

 金融機関は勘定管理コストを劇的に引き下げるシステムを研究中。

 電子取引を介在するマッチング業者(アマゾン、楽天など)を不要にする。

 いつでもどこからでもデータの受発信をというIoTの特性を活かして、少量で多発す

る取引を処理する際に、分散管理システムが威力を発揮。例えば米UJO社は音楽著作料を利用者が著作権者に直接支払う仕組みを開発。IBMとサムスンは洗濯機の洗剤の使用状況を常時監視し、補給時には自動決済で補充するシステムを開発中。

 

■ブロックチェーン技術の応用範囲。経産省が予測する潜在市場は67兆円。

サプライチェーン:原材料から製造過程、流通、販売までを一貫してブロックチェーンで管理。1つの製品の製販に関わる全ての工程を統一IDで管理し、各工程に関わる事業

者すべてがリアルタイムで各段階の在庫状況、不具合など、全体のフローを把握できる。

 

契約取引:企業間の取引で取引に関わる複数社の基本台帳を生成し、相互にチェック。

 

C2C:個人間のネット売買など、不特定多数が行う商取引をカバー。最大のポイントは個人認証。ガイアックスなどVB8社は従来ホストサーバーに掛けてきた莫大なセキュリ

ティ費を軽減するため、ブロックチェーンを応用したスマホ向け認証アプリを開発中。

 

仮想通貨の特徴

①通常のネット環境があればコストをかけないで店舗に支払決済システムを導入できる。

②資金移動は誰から誰に金が動いたか、分散された元帳に履歴を残すことで実行される。

③個人、業者の区別なく、参加者が相互に送金できるなど、自由度が高い。

 

電子マネーの特徴

①非接触型のICカード(ソニーのフェリカなどの書き込み・読み取りシステム)を利用して、円など通常通貨による決済機能を提供する。

②単一の発行体(TTP)が全ユーザーの残高を管理。

③TTPとしては、流通系が販促と顧客囲い込みのツールとして、交通系が小銭取り扱いの排除、路線乗り継ぎ時の自動精算システムとして、それぞれ普及。

③プリペイド方式(交通・買い物カード)と後払い方式(預金引き落としなど)がある。

 

ポイント集めが市民権を得る時代に

 普通預金の利率は0.001%、定期預金でも0.01~0.03%に対し、電子マネーのポイント

制度は100円の購入で1ポイント(1円)以下が相場。キャンペーンでは3~5%も登場、ポ

イントの共用性が高まるほど、事実上の値引きに近い効果が出てくる。

 となれば、預金するより実質的な“利回り”ははるかに高い。電子マネーの場合、入金の手間をかけても、メリットがある。新生銀行が振り込みやATM利用にTポイントを付ける、などの動きも出てきた。

 

■電子マネーのスマホ決済の仕組み

スマホ本体をかざす方式(お財布携帯):

スマホに内蔵したICチップの情報を読み取って決済する。NTTドコモが04年に携帯電話に非接触ICカード機能(Felica=電波による双方向通信)を搭載したのが先駆け。

 

スマホの画面を見せる方式:

専用の読み取り機が不要なので店舗が導入しやすい。利用者がスマホのアプリで「QR

コード」を表示、店側がタブレットでコードを読み取って利用者を識別。アリペイ(中国)はこの方式で年200兆円を決済。

 

■グーグルが電子決済サービス「アンドロイドペイ」を16年秋に開始。

 

■9月16日に発売する新型「iPhone7」にお財布携帯のフェリカ機能を搭載、まず10月から「スイカ」の電子マネー決済ができるようになる。JR東日本がアップルに技術協力して実現。

 

■公共料金、通販代金など各種の請求内容をスマホにバーコードの形で表示。コンビニに備えた読み取り機にコードをかざすだけで決済が。収納用紙をなくすことで決済や集金の手間を省く狙い。 コンビニ3社で扱う収納案件は年間で8.6億件、9兆円弱にも上る。ペーパレス化による作業合理化効果は大きい。