20170119

2017年1月19日(水) 16時より2017年最初のneco論で経済が始まりました。

今回は2017年ニュース全般についてですが、この日も米国トランプ大統領の話題が中心になりました。世界は米国、英国の動きに連動したものになりそうですね。

■日本的な雇用慣行が非正規労働定着の温床に

▼終身雇用などの慣行がない米国では、雇用調整はレイオフが一般的。勤続年数の短いものから順番に一時帰休にというルールで対象者に身分的な格差はない。

▼日本の場合は正規労働者の解雇には抵抗が強いので、いきおい雇用調整は(労働力と賃金の両面で)非正規労働者に集中しがちに。00年以降のデフレの長期化で同一労働同一賃金の本場である欧米の労働組合なら到底認めないような“身分的格差” が定着してしまった。

 

欧米の場合は「自由貿易+移民」が増幅。

▼EU離脱を決めた英国の国民投票では、地方の労働者がポーランドなど東欧諸国からの移民急増に反発。グローバル化の波に取り残されてEUへの負担感ばかりを募らせた格差意識が底流にあったといわれる。

▼米国でも同様の現象がみられる。企業の海外移転や移民の増大で貧困層に追いやられたと感じている白人の労働者階層が、経済のグローバル化(日米が主導したTPP交渉など)や移民受け入れに反対するトランプ氏を共和党の大統領候補に押しあげた。

 

 

 

日本の本当の試練はオリンピック後の20年度以降に来る。25年度には「団塊の世代」が全員75歳以上となり医療や介護の支出が膨らむことが目に見えている。

 

■年金の支払い原資、年金積立金(厚生年金と国民年金の合計)は目減りする一方。 現在の積立金残高は約150兆円。向こう10年間の平均収益率を1.4%、賃上げ1%と仮定すると、積立金は38年に消える。賃上げゼロなら32年に積立金はゼロになる計算。 04年度の年金改正で政府は賃上げが名目で2.5%、積立金の運用利回りが4.2%との前提で「100年安心年金プラン」を組み立てたが、その前提は大きく崩れた。

第4次産業革命が新たなグローバル化の駆動輪に

 

■政府は16年5月末にまとめた「日本再興戦略2016」で、「第4次産業革命」に約4割の紙幅を充て、成長戦略の中軸に据えた。

 第4次産業革命では、IoTやビッグデータ、人工知能(AI)など、最新のICTを動員して産業を活性化、20年のGDP目標600兆円に向け、30兆円(増加分の3割)を担う、という戦略。 主戦場はデータの収集と処理をめぐる総合技術のグローバルな競争に。

 米国では、GE、インテル、シスコなどが率いるIoT推進団体(IIC)が日本など海外企業を巻き込んで世界基準作りを目指す。

 ドイツは政府主導で「インダストリアル4.0」の推進組織が。 日本でも官民合同の「IoT推進コンソーシアム」が15年10月に始動。日米独による標準化作業も課題に。 スマホ、自動車など移動体通信を使ったBtoC市場での実用化は足が速い。

日本の経常収支の中身が変貌

 15年度の経常収支は18兆円だが、内訳は第1次所得収支が20.5兆円で黒字の太宗を占め、貿易収支はリーマン以降は赤字基調。輸出産業が海外生産に転じた結果で、主力の自動車では海外生産比率が65%を上回っている。見返りに、所得収支が大きく伸びている。

80年代まで、日米間は産業構造の進展に応じて貿易摩擦を繰り返した。

60年代は繊維製品、70年代後半は鉄鋼製品、80年代は半導体、電機、自動車と時のリーディング産業が対象となった。相手はいつも日本だった。

85年に米の対日収支赤字が500億㌦を越えたところで、米通商代表部(USTR)は「不公正」な貿易相手国と行為を特定し、改善がなければ制裁を科すスーパー301条を導入。日本、インド、ブラジルが対象に。

その後、日米間の貿易交渉を重ねて日本側が輸出を自主規制するなどの合意が成立し、90年には301条の対象外となった。

トランプ大統領の次の一手は最大の赤字相手の対中戦略だ。

Brexit、トランプ旋風が欧州大陸でも吹き荒れる?

 

■EUの立て直しには独仏の協調エンジンの復活が必須条件。メルケル首相が4期目を確保し、フランス大統領選で共和党のフィヨン氏が勝つことがカギ。

 

ドイツ(17年秋、連邦議会・下院選)

メルケルは16年11月にCDF党首として下院選に出馬を表明。難民受け入れに反対するAfDが第2党に。メルケルの地元では地方選の得票率でCDFを上回る

 

 フランス(17年4月、大統領選挙)

中道・右派代表のF.フィヨン氏とEU離脱と移民排斥を明確に掲げる国民戦線(FN)のM.ルペン党首との一騎打ちに。

 

 オランダ(17年3月総選挙)

反イスラムを標ぼうする極右政党の自由党が10年の選挙で下院の第3党に。ウィルダース党首が16年6月にオランダのEU離脱を問う国民投票の実施を呼びかけ。

 

イタリア(16年12月、憲法改正は国民投票で否決された)

上院の権限を大幅に縮小する改憲を拒否されたレンツイ首相は辞任。グリッロ氏が代表する五つ星党が難民・移民の排斥を掲げて人気第1位に。

 

 

<気になるその他のポイント>

 

*トランプはTPPからの撤退のほか、EUに次ぐ成果を上げたNAFTA(北米自由貿易協定)の破棄も表明している。場合によってはWTO(世界貿易機関、加盟164ヵ国)の在り方にまでも影響が。

 

*世界のサプライチェーンは90年代以降の20余年間でグローバル化が急速に進み、様相が大きく変わった。欧米では多国間協定による自由貿易圏でEU、NAFTAがチェーン構築の推進役を果たした。アジアでは、中国の人的資源と国策による産業振興、韓国の強力な海外市場攻略策などで、東アジア圏域に協定なき自然発生的集積が形成された。

通信の最先端、IoTに対応する次世代型通信の5Gに5兆円を投入し、この分野での主導権を狙う。

 

*最大手の中国移動通信集団(チャイナモバイル)は世界の40社以上と5G技術を共同開発、19年から中国の100万カ所以上ある4G基地局を5G用に更新。中国政府は25年に完全自動運転車を実現し、30年には完全自動運転車を新車販売の1割程度にする方向で検討を進めており、5G通信網はその基盤となる。